本研究の目的は,放電プラズマが持つ強力な化学分解作用を生かした,原理的に炭酸ガスの排出量がゼロの新規水素ガス製造法の開発である.プラズマプロセスの反応効率の改善が実用化への課題であり,主としてプラズマ励起源のパルス制御による低電力化,並びに超微粒子触媒を「その場」供給することによる反応温度の低温化により効率の改善を図る.本年度は以下の成果を得た. 1. 触媒の状態をその場測定するためのラマンシフトスペクトル分光装置を完成し,測定データを得た. 2. 改良してきた水素生成のプロセスモデルに関する測定データから,各条件における水素の生成量および反応効率ηを計算した.その結果,ηに関しては,各実験条件に対して平均的な値としてη=0.2を得た.3. 昨年度に気づいたこととして,生成した水素もプラズマ化し,装置部材の水素化を促進することによる安全性への影響が考えられ,急遽,研究協力者との共同で検証実験を行った.その結果,樹脂の種類によっては,かなりの深さまで水素(原子)が拡散浸透し,深さ数10nm~μm程度の表面浸食が生じることを明らかにした.4.固定される炭素に平面構造を持つグラフェンが生じることが分かった. なお,今年度に計画していた触媒のその場供給法による反応効率の改善実験は,装置の不調により取りやめて,従来の実験データを参考にすることとした.以上の結果をまとめて国際講演会the 11th APCPSTにて発表した.本研究で達成したη値は,実用に供せられる値には達しなかったが,水素分圧測定法・その場ラマンシフト分光装置などの計測法を開発したこと,および各条件に対するプロセスデータ得たことは,新規水素製造法のさらなる開発を行う上で有用と考えられる.
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