本研究においては、ヒトの疲労の脳内メカニズムの解明に向けて、MRIを用いた非侵襲的脳機能定量法を確立し、安静時および疲労負荷時を通じての脳機能モニタリングを可能にする。これにより疲労に関連した脳領野を同定し、それら脳領野間の機能連関を探ることが本研究の目的である。 本年度の研究実施計画の項目1.「MRIを用いた安静時の局所脳血流量、酸素代謝率の定量法の確立」に関しては、それぞれの撮像方法の新規開発を終えた。これらの方法により、従来の機能的MRIでは観測ができない安静時における脳血流量、および、酸素摂取率の定量測定が可能になった。これらの開発に関しては、一部に定量性向上のための改良の余地を残し、さらには、実用のための最適化を施す過程が残されてはいるが、本年度の実施予定目標はほぼ達成できたと考える。目下、それらの定量法としての残された課題を仕上げ、方法論的妥当性を検証し、成果発表へ向けて結果をまとめる作業に入っている。 本年度の研究実施計画の項目2.「健常人ボランティアを対象に疲労負荷課題を施行して、疲労関連脳領野を同定する」計画に関しては、上記項目1の定量法が開発され、方法論的に確立されてから本格的に実験を施行する予定であり、この優先順序のため、今年度は疲労負荷課題の選定など実験課題の準備段階に留まっている。これは来年度実施予定の中心的課題であり、現在、その計画と準備を進めている。
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