平成23年度においては、平成23年3月の東日本大震災による研究室の被災により破壊・散乱したデータ資料の復元と整理に多くの時間を費やした。本年度の研究内容は、前年度においてドイツ連邦共和国の青少年を対象に実施したメディア利用状況に関するアンケート調査の分析と、ドイツにおける青少年有害メディアに対する政府や教育関係者の取り組みに関する状況の聞き取り調査と資料分析である。 1)昨年度ドイツ連邦共和国の小村において15歳の男女30名を対象とした、携帯型多機能メディア機器の普及・利用状況に関するアンケート調査結果のさらなる分析からは、携帯型多機能メディア機器が、一方においては地方の小村と大都市部の間の文化格差を縮小していること、また他方においてはこうした過度な商品広告や危険な情報をも青少年に与えていることに対する危機感が存在することが改めて明らかになった。保護者や教育関係者だけではなく、青少年自身もこの危険性を認識してはいるが、その認識の程度には個人格差があることが明らかになった。また、携帯電話の利用目的は保護者との連絡伝達と同等に、青少年同士のコミュニケーション手段としての位置づけが高く、15歳の青少年にとって不可欠な必需品となっていることが改めて明らかになった。 2)ドイツ連邦共和国青少年有害メディア審査機関副所長ペトラ・マイアー氏にインタービューを実施した(東京、3月)。その聞き取りを通して、ドイツにおいてはインターネットを利用した外国人や異文化圏出身者等に対する差別・攻撃を煽るサイトが近年再び顕在化していること、ならびに教育機関はその対策として異文化理解教育の強化とともに、インターネットを中心としたメディアリテラシー教育の強化と啓発活動に取り組んでいる状況が明らかになった。
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