本研究は、現在の日本において深刻化しつつある貧困と社会的排除の問題について、とくに稼働能力を持つ人びとの社会的包摂に向けたアクティベーション政策を検討することにある。具体的には、①就職困難者・失業者を対象に、自治体や社会的企業による新たな支援に着目し、その有効性を分析することにある。また、②こうしたアクティベーションに取り組むヨーロッパ諸国のなかでもフランスに着目して、参考事例としてそれらを検討する。これら2つの視点を踏まえて、日本における社会的及び職業的なアクティベーションに向けた有効な施策を提案することにある。 2012年度は、一方でフランスでの現地調査を実施し、他方で日本の政府・自治体・社会的企業の調査を実施した。フランス調査では、就労連帯所得(RSA)のもとでの社会参加と就労に向けた自治体、雇用局、社会的企業の連携とそれらによるパーソナル・サポートのあり方について聞き取り調査を実施した。 日本については、内閣府・厚生労働省によって2011-12年度に実施されてきた生活困窮者に対するパーソナル・サポート・モデル事業に着目し、大阪府・豊中市・吹田市・箕面市などの取り組み、これらの事業を直接に実施する社会的企業についても調査を行った。 これらの調査を通して、いくつかの先進地域においては、個別的な寄り添い型の相談と地域のさまざまな社会資源を活用した支援策によって、社会参加と就労に向けたアクティベーション政策が実施されていることがわかった。また、フランスをはじめ欧州諸国で広くみられる社会的企業が、日本においても成長しつつあり、その可能性を明らかにすることができた。 また、 日本政府においても、こうした動向を踏まえつつ、2013年度中に「生活困窮者支援制度」を実施することを検討している。本調査研究の成果は、これらの政策に直接的な貢献ができるものと考えている。
|