研究課題
本研究の主たる目的は、先進諸国の喫緊の課題である多文化共生社会における福祉国家の制度構想を研究することにある。この目的のために、(a)日本とドイツを事例研究の対象として選び、(b)とくに社会保障と労働市場の連関という観点から社会への移民集団の包摂と排除のメカニズムに着目し、(c)日独の福祉国家制度の実態および特質を実証的に比較分析するとともに、(d)かかる特質の背景にある理念や原理を析出し比較することで、両国の共通性と相違点を明らかにして、多文化共生社会に求められる福祉国家の制度的理念と組織原理を検討することが課題となる。平成23年度の研究計画では、日独の資料収集を引き続きおこないながら、両国の移民政策、社会保障政策、労働市場政策の特質の把握に努める、とりわけ、社会保障と労働市場の連関という観点から社会への移民集団の包摂と排除のメカニズムの解明に資する、福祉国家への移民集団の包摂と排除の実態を調べることを課題とした。研究の実績としては、おおむね順調に進んだといえる。研究発表に関していえば、不平等と格差を生む市民社会の構造についての研究論文と、多文化社会における平等の理念について論じた研究論文を発表することができた。前者は、移民集団がどのような仕方で社会経済的な不平等を抱えることになるかのメカニズムを解明する点で、また後者は、多文化共生の観点からどのような平等の理念が福祉国家制度を構想する上で重要になるかを論じた点で、本研究を進めるための土台となるものである。
2: おおむね順調に進展している
平成22年度の当初の予定で参加する計画であった、北京で開催されるはずの政治理論の国際シンポジウムが、主催者側の都合で開催が取りやめになるという事態が生じたが、研究遂行上の大きな支障となるものではなく、他の点では順調に研究を進めることができた。
計画通りに研究を進める予定である。昨年度では実現しなかったことであるが、海外のコンファレンスないしシンポジウムには積極的に参加するようにしたい。
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すべて 雑誌論文 (2件)
世界政治を読み解く(押村高・中山俊宏編)(ミネルヴァ書房)
ページ: 75-94
Building New Pathways to Peace(Y.Murakami, N.Kawamura, S.Chiba (eds.))(University of Washington Press)
ページ: 65-80