社会保障と労働市場の連関という観点から移民集団の包摂と排除のメカニズムに着目して、日本とドイツの福祉国家制度の実態および特質を実証的に比較分析した。この分析に基づいて、多文化共生社会に求められる福祉国家の制度的および規範的原理として、以下の3点がが明らかとなった。①移民に関わる福祉国家の制度構想において、労働市場へ移民を包摂する政策との連関性が重要となる。②移民に関する労働市場への包摂と福祉国家への包摂は、広く一般の市民をも対象とすべきである。③労働市場と福祉国家への移民の包摂という社会経済的な課題は、社会における文化的差異を理由とする偏見や差別の問題への対応という課題と連関させる必要がある。
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