本年度は,前年度までの成果を踏まえ,デザインボキャブラリーとしての取り纏めを実施した.具体的には,街並みメッセージが,場所単独のイメージのみ成らず.係留効果を通じて,場所が展開する場合において,大きく場所のイメージに影響することも明らかとなり,こうした場所単独のイメージと表通りから裏通りに入ると言ったような場面展開のパタン整理を,様々な繁華街において調査を実施することを通じて,繁華街構成を創り上げていくデザインボキャブラリーとしての取り纏めを実施した.その成果から,人間が街並みの連続体験を認識するパタンとして店舗の連続体として,認識するケースと,街路の連続体として認識するケースの二通りがあることが明らかとなった.つまり,その双方に配慮した繁華街構成を演出していかなければ,効果的に魅力ある繁華街構成とはならないことが明らかとなった. さらに,通例では街路における人の存在は,街路演出の操作変数とはしにくいことから,街路イメージ研究での取り扱いが少なかった「人の存在」について,スキーマ理論(事物間の連想の強度)の立場から,人の存在が連想されるケースとそうでないケースがあることを明らかにした.具体的には,直観記号の多い街路では,人の存在が連想されやすく,その結果,人の量が街路イメージに大きく影響し,論理記号の多い街路では,人の多寡は街路イメージにさほどの影響を与えないことが明らかとなった.つまり,例えば地方の歩行者交通量が減ってしまっている街路において,直観記号を多用する演出を行うことは,却って,寂れている印象を強める結果になりかねないということをいみしている. こうした成果を踏まえ,記号論に基づく街路イメージのデザインボキャブラリーが,連続場面,さらには,人の存在まで含め,拡張されてとりまとめられたと言える.
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