2012年度の研究実績は以下の3点にまとめられる。 1)筑波大学内での試行。2011年度末に通称ループ道路の一部路面(約400m)に道路名のケヤキに因むグラフィックを施し、2012年度に試行した。センターラインと横断歩道は消去され、shared spaceの重要な柱である「文脈の変更」を意図したものである。計画当初は学生と車両が頻繁に往来する湾曲部分であったが、他の工事と重なり、止むなく見通しの良い直線区間に変更した。結果は日本デザイン学会および学内の交通問題検討会等で報告した。複数の新聞にも採上げられた。 2)英国での調査。2012年5月にUWE (University of West England) で開催されたshared spaceの研究会に参加した。それを機に発案者H.Mondermanの死後、最も積極的にshared spaceの研究とデザインに関わるB. Hamilton 氏と会い意見・情報の交換を行い、英国の最新事例の説明を受けた。その後現地を視察。その中のロンドンのExhibition Roadは路面を単純なパターンに仕上げており、明らかにshared spaceの新しい展開を示し、筑波大学での試行と重なることを確認した。 3)成果の公表。shared spaceの概念は人間の尊厳に関わるものであり、安全性はもとより、経済的、景観的観点からもメリットは大きい。具体的事例を通して、多くの研究者、学生、一般市民に伝えるべく講演会には多くの時間を割いた。6月には台湾の台南科技大、崑山大学(台南市)、大同大学(台北市)、銘伝大学(桃園県)で教員、学生に、9月には神奈川県立高校の生徒と「公共の色彩を考える会」の会員に講演し、夫々意見交換を行った。また、雑誌<建築ジャーナル> No.1206 2012年 12月号 2~5頁で「サイン・アートが人と空間を繋ぐ」を発表。
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