研究課題/領域番号 |
22615005
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
蓮見 孝 筑波大学, 芸術系, 教授 (60237956)
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研究分担者 |
山中 敏正 筑波大学, 芸術系, 教授 (00261793)
貝島 桃代 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90323287)
村上 史明 筑波大学, 芸術系, 助教 (30512884)
吉岡 聖美 筑波大学, 芸術系, 研究員 (80620682)
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キーワード | 手づくね / ハンドワーク / ワークショップ / QOL / 医療 / 療養環境 / 参加 / ノーマライゼーション |
研究概要 |
H23年度の研究計画として設定した3項目に沿って、今年度の成果を概述する。(1)病院に求められるQOL概念の構造化:療養環境におけるQOL(Quality of life)、すなわち「生活の質」の意義として、「身体性」「精神性」「社会性」についての満足度が重要な軸となるQOL評価尺度の構造を確認した。また、英国「Maggi's Center」(がん患者支援施設)を視察調査し、施設で催されているプログラムの「手づくね」に関係する取組事例を調査した。(2)「手づくね」が精神身体に及ぼすQOL効果:ハンズオフ・ハンズオン体験による気分の評価(POMS)実験を実施した。画像鑑賞というハンズオフ刺激によって気分が改善することが示され、ハンズオフ刺激後に好みの画像を基に自由に描画するというハンズオン刺激、すなわち「手づくね」を体験することによって、POMS尺度の「活気」が上昇することが示された。このような気分の変化、すなわちマインドオンに関係するアート展やワークショップ(WS)が病院の療養環境改善に繋がることが示唆される結果を得た。また、人類史においてヒトにのみ顕著な動作となった母指対向性の動きに着目し、親指でプチプチを潰す動作に関する実験をおこなった。これにより、人が「手づくね」を好む状況の特性について調査した。(3)QOL効果の高いWSの企画と特性分析:筑波大学における療養環境改善の取組である現在までの活動を、(1)学生だけの展示、(2)学生と医療スタッフとのコラボ、(3)学生と一般来院者とのコラボ、(4)学生と医療スタッフと一般来院者とのコラボ、に分類し、参加性(制作における参加、ハンズオン)、交流性(アーティストとの交流、WS参加者同士の交流)、相互刺激性(WS参加者同士が作品を評価し合う、WS参加者同士が作品を競い合う)、顕示性(コラボレーション作品の展示、個人作品の展示)、意外性(WS制作過程での意外性、展示物が有する意外性)の特性について区分することによってWSの企画を構造化して評価した。また、手づくねWSとして計画した「紙ヒコーキ・ラボ」における参加者の行動観察により、「手づくね」にみられる参加者の行動特性を分析評価した。今年度までの研究に基づく、効果的な「手づくね」作品を用いたWSを次年度実施して有効性を評価し、効果的なWSの設計構築をおこなう。尚、今年度の成果はH24年6月に開催される日本デザイン学会春季大会等において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の研究計画として設定した(1)病院に求められるQOL概念の構造化(2)「手づくね」が精神身体に及ぼすQOL効果(3)QOL効果の高いWSの企画と特性分析、の各項目において一定の成果が得られた。また、H22年度の研究成果について、学会において9件の発表(口頭、ポスター、招待講演)をおこない、本研究から発展した2件の修士論文を発表した。これらにより、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度までの研究に基づく「手づくね」WSを実施して有効性を確認することにより、病院の療養環境改善に効果的なWSの設計構築をおこなう。また、感性科学における評価手法から着手している「手づくね」の基本動作に対する「大学生を被験者とする脳科学実験」についての成果をまとめる。最終年度として、これらを踏まえた研究成果をまとめ、「手づくね」に着目したアート&デザインワークショップの効果的な実践方法についてガイドラインを作成する。
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