今日、世界中のあらゆる国・地域において、グローバル化の波が押し寄せている。万人が物質的に豊かで利便性の高い生活を享受できる機会が得られつつあるものの、その反面で、さまざまな問題が顕在化している。なかでも、環境破壊や地域文化の喪失は、デザインの領域における重要な検討課題である。とりわけ、アジア、アフリカ、イスラム諸国などの非西洋文化圏の国・地域においては、当該の国・地域の歴史、気候、風土に基づいて構築されてきた生活に、全く異質の価値観が導入され普遍化することによって生じる齟齬が、上記の問題の大きな要因のひとつであると思われる。本研究は、長らく、環境との共生の生活が展開されてきた日本の陶磁器産地における「環境共生型」生活の実相のインテンシブな調査・探究に基づいて、そうした生活を支えてきた生活原理と生活指針を明確化するとともに、それらを今日にどのように創造的に展開し実践していくかを、デザインの観点から具体的に考究・提示することを目的としたものである。平成22年度においては、古くから陶磁器生産が継承されてきた愛知県常滑地域・瀬戸地域、京都府における実地調査を実施し、材料の採取、各種、廃材・端材の利活用、各種儀礼、また、今日のNPOなどによる景観創出についての取り組みなど、多様な側面からの資料収集を実施し、環境創生を支えてきた具体的事実を集積した。また、そうした日本における取り組みをより明確化するとともに、アジア、アフリカ、イスラム諸国の人びとと共有し、今後のそれぞれの地域文化の創生に寄与する基盤を構築するため、論文執筆、国際会議における発表、現地調査を実施した。
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