研究課題/領域番号 |
22615007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
植田 憲 千葉大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40344965)
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キーワード | デザイン / 地域アイデンティティ / 内発的地域振興 / 環境対応 / 環境調和型都市基盤整備・建築 / 資源循環型 / 環境調和型 / サスティナブル |
研究概要 |
今日、世界中のあらゆる国・地域において、グローバル化の波が押し寄せている。万人が物質的に豊かで利便性の高い生活を享受できる機会が得られつつあるものの、その反面で、さまざまな問題が顕在化している。なかでも、環境破壊や地域文化の喪失は、デザインの領域における重要な検討課題である。とりわけ、アジア、アフリカ、イスラム諸国などの非西洋文化圏の国・地域においては、当該の国・地域の歴史、気候、風土に基づいて構築されてきた生活に、全く異質の価値観が導入され普遍化することによって生じる齟齬が、上記の問題の大きな要因のひとつであると思われる。本研究は、長らく、環境との共生の生活が展開されてきた日本の陶磁器産地における「環境共生型」生活の実相のインテンシブな調査・探究に基づいて、そうした生活を支えてきた生活原理と生活指針を明確化するとともに、それらを今日にどのように創造的に展開し実践していくかを、デザインの観点から具体的に考究・提示することを目的としたものである。平成23年度においては、日本における代表的な陶磁器産地のひとつである鹿児島県日置市、鹿児島市、姶良市における薩摩焼に関する実地調査を実施し、材料の採取、制作、使用、廃棄、廃材・端材の利活用、各種儀礼、歴史的変遷、また、産業支援活動などの側面から、「環境共生型」生活の実相の把握を試みた。また、環境共生型生活に関するデータを多面的に収集するため、中国における伝統的なものづくりの古典である『天工開物』を参照とした研究、ならびに、中国民芸研究所における資料収集を行った。その結果、長い歴史のなかで、陶磁器制作の材料としての陶土や熱源としての木材の「適量採取」「全体活用」、ならびに、廃材・端材の「転用」などが徹底して実践されてきており、そのことは、地産地消が徹底された状況のなかでこそ、当該地域の環境共生の知恵は地域の景観などに豊かに表出していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22~23年度においては、国内外の陶磁器産地においてインテンシブな実地調査を行うことによって、陶磁器産地にみられる環境共生型生活の具体的事例を収集することができた。また、この活動を踏まえ文献調査を行うことを通して、各種資料収集、文献調査を行い、環境共生型生活の普遍的な生活原理を明確化するとともに、生活指針を導出する基礎的資料を収集できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度にあっては、これまでに、文献調査、実地調査、他の研究機関からの提供等によって得られたデータをまとめ、陶磁器産地における「環境共生型」生活を支えてきた生活原理と生活指針を明確化することを目指す。
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