グローバリゼーションの急速な進展の中で、文化面における影響は大きく、多くの国々は将来における自分たちの独自文化の変容・消滅の可能性に対し憂慮している。多くの発展途上にある国々において、その意識は特に強く、先進工業国日本の文化・伝統技術の継承の実績、さらには、その蓄積された知識を学び習得できる機会を得たいとの期待は大きい。22年度においては、まず、九州における消滅した和傘の産地調査を行い、その掃滅の経緯、復活の実態を把握した。 具体的には、福岡県中津市、福岡県久留米市(城島地区)熊本県山鹿市の消滅した和傘技術の消滅原因、それを取り巻く社会経済的環境。再現・復活させた各産地、の一連の活動分析を行った。その過程で、主要な地域デザイン要素の適応性を抽出し、観光資源としての活用の方向性に対する指針の導出を行った。特に、中津市と山鹿市においては、当地の和傘の復活・再興に対する原動力(地域の資源となりうる地域の人材、職人・企業などを明確にして、それらの利害関係者に対し具体的な地域デザイン提案を行った。城島地区においては、城島和傘保存会の地域資源としての重要性を行政、及び、地域の住民に伝えるべくその活動の現状を明らかにし、活動の方向性を検証した。調査結果は報告書としてそれぞれの関係者に配布した。 本研究は予定通り22年度の活動を終了した。中津の成功事例などを精査したことにより、今後の日本およびイスラム諸国を含む発展途上国の地域振興のひとつの指針形成に寄与する基盤が形成された。
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