研究課題/領域番号 |
22615008
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 直人 千葉大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90568239)
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キーワード | グローバリゼーション / 消えた伝統工芸品 / 復活した伝統工芸品 / 薩摩焼 / 小鹿田焼き / 地域振興デザイン / 途上国の地域デザインの指針導出 |
研究概要 |
グローバリゼーションの急速な進展の中で、文化面における影響は大きく、多くの国々は将来における自分たちの独自文化の変容・消滅の可能性に対し憂慮している。多くの発展途上にある国々において、その意識は特に強く、先進工業国日本の文化・伝統技術の継承の実績、さらには、その蓄積された知識を学び習得できる機会を得たいとの期待は大きい。 23年度においては、22年度の和傘の調査に引き続き、九州における薩摩焼と小鹿田焼きの産地調査を行った。特に、前者に関しては、より民芸品に近い黒ものといわれる薩摩焼の特定された技術の消滅・衰退の経緯、そして復活・振興の実態を把握した。具体的には、佐太郎窯、荒木窯、沈寿官窯の詳細調査を実施した。消えて行った技術の復活では一自分達の生活のためにつくり、使うことを通して、半農半窯の精神を大切にした「薩摩焼」文化を守り・育てる薩摩焼に産業に従事する人々の様態を考察した。そしてその復活・継承の効果的なアイデアを提供した。たとえば、「薩摩焼」の表札づくりはそ一例である。 小鹿田焼きの調査は、1700年代半ばから「みだりに昔を崩さない」という小鹿田焼きに従事する陶工たちの陶器の制作にかかわる生活のあり方を、詳細にわたり考察した。それは決して消える事のない伝統工芸技術の実態を検証することであり、消えてしまった伝統工芸品と地域とのつながりを考察する上で興味深い結果となった。それは、多くの住民、陶工からのアンケート回収やインタービューに裏付けられた結果である。 この知見をイスラム諸国に移転するためのIRCICA(イスラム文化歴史工芸研究所)との日本における協議は昨年の震災のためスケジュールの調整が難しかった。しかしながら、2011年2月のオマーンにおけるIRCICAの研究者との協議は十分行われており、24年度の活動内容を詰めているので問題はない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22~23年度においては、国内外の伝統工芸品産地において実地調査を行うことによって、消えてしまった伝統工芸品のその消滅原因、復活の鍵となる地域の取り組み具体的事例を収集することができた。これらの知見をイスラム諸国で実践する基礎的なベースは構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において本研究は、研究代表者、連携者、および、博士前期課程の学生による4ヶ所目(日本国内)の現地調査研究の実施を行い、報告書(英文・和文)を作成し、発表する。イスラム諸国の調査研究対象国をインドネシアとした。インドネシアのバンドン工科大学との連携に基づき調査の実施を予定している。その成果はIRCICA(イスラム文化歴史工芸研究所)と共有する予定である。
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