グローバリゼーションの急速な進展の中で、文化面における影響は大きく、多くの国々は将来における自分たちの独自文化の変容・消滅の可能性に対し憂慮している。多くの発展途上にある国々において、その意識は特に強く、先進工業国日本の文化・伝統技術の継承の実績、さらには、その蓄積された知識を学び習得できる機会を得たいとの期待は大きい。 2012年度においては、2011年度に実施された九州における薩摩焼と小鹿田焼きの産地調査を2012年度も引き続き実施した。また、23年度に予定されていたIRCICA研究員との日本における学術交流が東日本震災のため中止されたので、2011年2月にオマーン国マスカットにてIRCICAにより開催された国際会議の出席の際、海外のイスラム国での調査の概要を打ち合わせた。結果として、イスラム諸国における伝統工芸文化の復活・振興のための調査対象にインドネシアを取り上げ、2012年6月バティック文化の実態調査を行った。 加えて、愛知県豊田市足助町において海外との学生との交流を図るため消えてしまった農村工芸文化、先人の知恵に対する調査、及び、長野県安積野市において消えてしまった天蚕文化の復活のための聞き取り調査を実施した。 小鹿田焼きの調査は、1700年代半ばから「みだりに昔を崩さない」小鹿田焼きの生活様態を陶工及びその家族がかわる生活の中で考察し、報告書としてまとめた。また、これらの研究成果は、2012年10月デンソー社会貢献事業の一環でアジアの学生に愛知県足助町で開催した「先人の知恵から学ぶ地域づくり」ワークショップにおいて紹介された。また、2013年3月に今後もこの成果を他の地域においても発表する機会の創出、また当該地域が復活しようとしている地域の工芸文化の復活を進めるためにも、安曇野市、愛知県豊田市足助町などで研究会を開催した。
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