研究概要 |
明治期におけるdesign概念の導入と対訳,高度経済成長期におけるカタカナ語「デザイン」の確立,現代における新領野デザイン活動の展開を対象にデザイン行為や思考をあらわす言語概念の考察を目的とし,本年度は,昨年度に引き続き明治時代の資料収集調査を実施するとともに,高度経済成長時代におけるカタカナ語「デザイン」が各種の領域で確立されて用いられていく過程を調査した。あわせて,今日,新領野において「デザイン」として展開される活動について予備的な調査を進めた。高度経済成長時代については,「工芸ニュース」誌を中心に,デザイン評論,デザイン教育,デザイン行政,デザイン実践に用いられた言説の調査を行い,デザイン思考・行為に関わる提言,議論としての言説の抽出ならびに整理を進めた。昨年度に引き続き,財団法人工芸財団研究会において戦後から今日にいたるデザイン活動の目的等の討議を行った。新領野におけるデザイン活動の展開については、「デザインアクティヴィズム」について同語をテーマとして実施された国際研究集会(於バルセロナ)を調査し議論ならびに実践を確認した。「ソーシャルデザイン」について,BOP,ProBono,公共サービス改良などに向け実施された活動例を調査し行為の対象やアプローチについて考究を行い,研究会において発表した。広く浸透しつつある「サービスデザイン」「エクスペリエンスデザイン」については,デザイン教育における同概念の提唱を確認し用法を検証した。また,従来の工学領域におけるイノベーション創発に向けた「デザイン思考」教育について行われている議論の確認を行った。これらの調査と分析を通して,工業に関わる用法,生活提案や社会改良に関わる用法,技術やシステムの革新に関わる用法として語デザインの意味内容の変容と対象を拡大する状況が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査についてはほぼ予定通り進んでいる。他方,研究代表者が担当する学内業務(就職担当等)において,社会状況変化(震災,雇用減少)により予期していない業務負担増があったため,分析等にあてる時間が十分にとれなかった。また,資料収集・整理を担当していた研究員が,最終四半期において別プロジェクトにより在外調査で不在となった。
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