21世紀に入り非物質的な事象を対象とするデザイン活動が増大している状況において,新しい領域におけるデザイン概念がどのようにとらえられているか調査を実施し考究した。英国において,デザインコンサルタンシーSTBYによるサービスデザイン実践事例,ケンブリッジ大学のデザインマネジメント教育研究,王立芸術大学院大学Innovative Design Engineering教育研究,POLICY CONNECTによる政策シンクタンクにおけるDesign & Innovation研究と社会政策としてのデザイン提言の状況,また,ポルトガルIADEクリエイティブ大学において同国の社会経済状況下における中小製造業やローカル組織におけるサービスデザインのアプローチについて,等のインタビュー調査を行い新たなデザイン活動の状況,各活動において設定されるデザイン概念ならびにデザイン思考と実践に向けた資質の確認を行った。文献資料調査の分析をあわせて考究し,広く浸透しつつあるサービスデザイン,ソーシャルデザインなどの概念についてデザイン教育およびデザイン実践における同概念の提唱を確認し用法を検証した。それらの教育と実践において,Co-design手法の展開が広く進められていることを確認し,デザインの主体者やデザイナーの役割について検討を行った。これらの調査と分析を通して,工業に関わる用法,生活提案や社会改良に関わる用法,技術やシステムの革新に関わる用法として「デザイン」の意味内容の変容と対象を拡大する状況が示された。
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