研究概要 |
本研究課題では平成22年度に次の研究を実施した。 1. 照明による光の空間分布の一般的な近似表現方法を検討し,空間全体に分布する全般成分,片側から勾配をもって分布する勾配成分,局所的に分布する局所成分の3つの特徴量を導入した。 2. この3変数を系統的に変化させた照明条件を模型空間に設定し,照明空間に対する視覚的心理量の評価実験を実施した。具体的には模型空間に形成される光環境について,光の量を表す平均水平面照度E,光分布の全体的な勾配を表す指標k(平均全水平面照度に対する全般照明による平均水平面照度の比),局所光による光の変動を表すN×LCの3変数の値を設定可能な模型空間と調光制御装置を作製し実験を行った。評価した視覚的心理量は模型空間の明るさ感,開放感,活動感,快適感である。心理評価の方法は,参照模型空間の各心理印象を基準値100として,様々な照明条件を設定したテスト空間に対する視覚的印象を数値で回答する方法を採用した。実験の結果,明るさ感は照度が主要な決定変数となり,開放感は照度と勾配,活動感は照度,勾配,局所光分布に影響を受けることが示された。またこれらの視覚的印象はE, k, N×LCの3特徴量に基づいて良好に予測できることが示された。さらに評価結果を3特徴量を軸とする座標空間上に記述することによって,光環境の物理的な特徴と人間の感性評価との関係を総合的に把握する基礎データを得ることができた。 3. 色光照明の普及の可能性を考慮し,照明光の色を変数として照明空間の心理印象を評価するための予備的な実験を実施した。
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