本年度は食の地域ブランド(以下、ブランド)の地域性とその影響についての考察と、ブランド創成の実践的デザイン方法論についての考察を行った。 自治体や商工会議所等(以下、地域団体)が主導する地域ブランド認証制度について、文献調査等から抽出した9団体の認定要綱の内容分析から、ブランドに求められる地域性は、農産食品や水産食品、加工食品等の個別要件と、ブランド名やプロモーション等の共通要件に分類できた。また、地域団体は地域性の共通用件として当該都市の認知度やイメージ想起を重視しており、地域性の個別要件として生産地、歴史文化、原材料を重視していることが導出された。加えて、「福津の極み及び地場産品等に関する福津市民住民意識調査」(2012年9月)から、ブランドは当該地域住民の地場産品への愛着の醸成については効果があったが、地域産業の発展に寄与する可能性があるもの(加工食品、料理等)と、必ずしも効果が明確にならないもの(生鮮農水産物等)があることが導出されたが、この結果については、さらに精査が必要である。 一方、地方都市がブランド創成を通じて、都市の認知度やイメージ想起の向上、地域産業の活性化等を効果的に推進するためには、個別の課題を解決する実践的デザイン方法論に関する研究と、それらを統合した「食の地域ブランド創成デザインモデル(仮説)」に関する新たな研究が必要となることが明らかになった。例えば、地域資源の調査・評価方法や、ブランド創成・評価方法、ブランド戦略策定方法、ブランドの定義・文書化方法、情報発信方法(広告・PR・販売促進等)、来訪客のブランド評価及び地域資源への再投資方法、知的財産権管理方法、ブランド定義文書・画像等のデジタルアーカイブ方法、制度設計方法、人財育成方法等であるが、これらの研究課題や「食の地域ブランド創成デザインモデル(仮説)」については今後継続研究が必要である。
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