研究概要 |
国内の都市部における自動車の警笛使用の現状を把握するため,関東と闘西で意識調査を行った。参加者に調査票を配布し,警笛を使用したドライバーと,警笛を鳴らされたドライバーおよび歩行者の立場ごとに,警笛が使用された状況(場所,時間帯,吹鳴パターン,使用目的など)や警笛を鳴らされた時の心理状態,個人属性(年齢,性別,運転歴など)などについて回答を求めた。警笛音の特徴や使用目的と聴取者の心理の関連などを検討するため,回答のクロス集計を行った。 ドライバーの警笛の使用状況については二つの地域で舷た傾向が見られた。さまざまな場所,かつそれほど危険を伴わない状況下で,挨拶や注意喚起のための短い警笛が多用されていた。一方,吹鳴時間の長い警笛は,頻度は少ないものの,交通量が多く危険度の高い状況で,注意喚起や危険報知のために用いられていた。 警笛は歩行者に対しても頻繁に使用されており,鳴らされた歩行者のネガティブな心理的反応が多く見られた。関東の結果では,注意喚起や危険報知の警笛に対する「驚いた,うるさく感じた」などの回答が目立つ。関西の結果では,歩行者に対する危険報知のための警笛使用が関東ほど多くなかったが,注意喚起の警笛に対する「驚いた,うるさく感じた」などの反応が多数見られた。 調査の結果,警笛に対するネガティブな反応はドライバーよりも歩行者で多く見られた。警笛は安全確保を目的として車両に装備されているが,車外の人間に対する影響を考えると,その音響特性や使用方法に検討の余地があると考えられる。 以上の調査に加えて,警笛の吹鳴パターンが聴取印象に与える影響を実験により検討した。結果として,警笛の吹鳴時間が長いほど,また吹鳴回数が多いほど聴取者の不快感が強まる傾向が見られた。また,ドライバーの警笛の使用意図を判断する実験も行い,吹鳴回数の増加と共に意図不明の回答が多くなることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では,1年目(平成22年度)に警笛に対する聴取印象の測定実験や使用意図の判断実験を行い,2年目(平成23年度)に警笛の使用状況を調べる国内での意識調査を計画していたが,おおむね計画どおり実施し,成果を得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり,実際の警笛の使用状況を調べるため,幹線道路の交差点付近などで実測調査を実施する。警笛の発生状況をある程度の期間内(数日~数週間)で記録・観察し,警笛使用の現状を把握する。この際,長時間にわたって騒音計で音響物理指標を記録すると共に,現場の音の録音や映像の録画なども行い,収録されたデータから警笛が使用された状況を分析する予定である。
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