研究課題/領域番号 |
22615029
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 徹 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 准教授 (30294995)
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キーワード | デザイン / 哲学 / 概念 / デザインの倫理 / 環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、20世紀に興隆を迎えた近代デザインの哲学的基礎に関して、モダニズムとポストモダニズムの観点から考察し、デザインないしは芸術工学の認識論的・存在論的位置について一定のモデルを提示することを目的とする。 本年度は、おもにデザインの倫理的側面からの研究を中心に行った。一つには、建築物の具体的な設計形態に、倫理学的な価値規範や認識論的な問題性がどのように反映しているかを具体的に研究し、設計の継承とその背後にある制度や思想の相関性について検証した。その成果を論文として公表した。また、2011年の3月11日に生じた東日本大震災とその後の原発事故に関して、当初の研究予定にはなかったが、原子力発電の存在論的・認識論的な研究を行った。これは工学技術と人間の関係に関するデザイン論的研究である。本研究は学会誌に掲載されることが決定している。また、研究成果の公表には至らなかったが、3.11以降の震災やその復興に関して、未来世代や過去の世代との関係、未来の記憶や想起に関する研究、これまでの社会の基本原理となった自由主義や功利主義の限界、新たな原理としての共同体論の観点からの街作りの可能性などについて研究を行いその一部を講演などで公表した。 また、デザインのコンセプトに関する原理的研究を行った。デザイン行為は、形象と概念との関係によって成り立つが、それについて、ドゥルーズとガタリの概念論を応用する可能性について考察した。本研究は日本デザイン学会での発表を予定している。 以上の研究と並んで、設備備品費で購入したデザイン書の一部に関して、その基本的な内容の書評・データベース化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3.11の震災・原発事故が生じたため、当初の計画になかった研究の側面の重要性を認識し、それに対応するという経過をたどった。それにより、当初予定していた研究の一部に遅れが生じているが、それもまた研究全体にとって必要な理由による。全体としての研究は順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究の最終年度にあたるため、研究成果の公表に主に力を注ぐ。当初の研究内容に関する遅れをカバーし、新たな研究の側面を包括したかたちで、研究の全体的なとりまとめを行う。
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