研究概要 |
本研究では,ヒトの体性感覚に基づいたマルチモーダル・インターフェースをデザインするための手法を創出し,実世界空間においてインタラクティブな情報探索を可能にする情報表示システムを構築する.全体レイアウトとしては床面に円形のディスプレイを設置し,知覚者が情報の視覚的な形状のみならず,実世界空間における傾き・挙動をデザインの一要素として制御することで,浮遊感・没入感・昂揚感などの身体感覚として実感できるインタラクションを実現した.そして,ヒトの認知過程の理解に基づいて体性感覚によって制御を行う情報表示手法を導き,さらに応用対象分野の要求を勘案したユーザインタフェースで情報を制御し,ユーザ同士が情報共有することで気持ちの伝達を行うというコミュニケーションデバイスとして構築を行った. 本システムは,色調の選択方法や色調変化の手順にルールを設定していないため,ユーザ同士が使用する過程において,互いの意図を推測しながらコミュニケーションのルールを形成することができる.また,リアルタイムかつ連続的に色調が変化し,二つの発光エリアによるフィードバックから相手との同期状態が量的に認識できるため,色調変化に意図や感情を込めることが容易である.ユーザによる使用実験から,「きれい」や「楽しい」という意見が多く,視覚と体性感覚において効果的なインタラクションを得ていた.非言語コミュニケーションにおいては,色調変化に相手のメッセージをくみ取り「色合わせ」を意図した使い方が最も多く,非言語コミュニケーションによるメッセージ交換を支援したものと考えられる.一方で,相手との色調が一致してもすぐに変化してしまうことが頻繁に起こったため,色調が一致したことを双方のユーザに知らせると共に,一致した状態を保持するようなフィードバックが必要であることが分かった.また,インタフェースの傾斜と不安定な振る舞いに対して,高齢者になるほど恐怖感を覚える傾向があったこのことから,高齢化が進む社会において,視覚と体性感覚に働きかけ,身体的な能力をより高めるようなインタラクションを伴った情報表示システムが必要であることを実感した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本システムSyncFeelのプラットフォームとなるハードウェアに付いてはほぼ完成し,本システムの機能をもとに新たな小型電子回路を設計し,モバイル型SyncEggの開発を行った.さらに応用対象分野の要求を勘案したユーザインタフェースで情報を制御できる情報表示システムへと展開し,照明制御システムSyncFeel-Lightなどの商品開発に着手することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
本システムSyncFeelの感覚モダリティに基づいた操作感は,身体機能回腹のためのリハビリテーション支援システムとしての有用性が期待できる.また,身体的に豊かな操作感のマルチモーダルインタフェースとして,デジタルコンテンツやゲームなどのソフトウェアを制御するコントローラー,あるいは児童向けの遊具としての有用性も期待できる.今後は本システムの機能を,ハードウェア・ソフトウェアの両面から検証し,様々な情報機器のインタフェースに拡張していく計画である.
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