本研究は、看護師らと連携し学際的研究チームにより、病院の協力のもと、医療従事者と患者双方を支援する「脱着容易性」と「生きる力の向上」に資する「病衣(入院患者が着用する衣服」について、伝統技法「有松・鳴海絞り」による伸縮性を応用するデザインから解決をはかることを目的としている。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。 ①「有松・鳴海絞り」を活用した病衣プロトタイプの製作および検証:前年度までの知見を基礎とし、3種の縫い絞りのそれぞれの伸縮性や審美的特徴などを、病衣構造の各部位に適宜使用した、プロトタイプを二種作成した。プロトタイプAは、着脱動作時にアームホール位置を目視できるようパターンを作成し、脇身頃にポリエステル生地を素材に縫い筋杢目絞りを形状安定加工することで、伸縮性と日常的形態を保持できるデザインを採用した。プロトタイプBでは、アームホール脇にヒシマチを加えることで、Aよりもコンパクトなデザインを考案した。ヒシマチはバイアスに裁断した生地に雁木杢目絞りを施すことで、より伸縮方向が自在な効果が明らかとなったため、それを採用した。尚、下衣デザインは、AおよびBともに「マリンパンツ」の構造を応用することで着用した状態で股下まで開口が可能となり、看護側の負担軽減も考慮したデザインとした。後身頃のウエスト部分と裾部分に杢目絞りのパーツを加えることで、従来の締め付け感をなくし、且つ、着崩れや捲り上がりの防止を可能とした。病衣プロトタイプの検証:プロトタイプは、健常者(5名)への着用実験を実施し官能評価を行った。 ②病衣デザインの公的発表6月には「有松・鳴海絞り」の新たな可能性について論考(中日新聞)を、11月には「愛知・名古屋産業交流展(於東京ビッグサイト)」で1月には「有松・鳴海絞り」の産地である名古屋市緑区有松で発表を行うことで、本研究の意義を広く周知することができた。
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