1) 地域環境からの自然素材の入手と保管活用 土をはじめとした自然素材の循環・再生の可能性を実践的に探求するため、材料を市場で購入するのではなく、高速道路建設のために解体される江戸時代の民家土塀の土約12tを人力で救出、利用可能な状態で保管した。同時に、撤廃される竹林から竹70数本、稲田から大量の藁も入手し、保管した。作業を通じて地域の工務店・解体業者・農家等と交流し、既存の流通ルートではない材料調達や技術の保存継承の可能性について示唆を得た。 2) 土・竹・藁による建築空間の制作・運営・解体 土素材の再生・循環と造形的可能性を検証するため、2010年夏に京都国立近代美術館において開催された企画展「生存のエシックス」において、1)で入手した材料を用いて、ドーム状の建築空間(正楕円平面長径480cm短径405cm、高さ450cm)をワーク・イン・プログレスとして構築した。制作にあたっては、二重竹小舞という独自の技術を開発し、厚さ25cmの継ぎ目のない曲面壁を実現した。完成後は美術・建築・左官・造園・陶芸、さらに市民や学生などジャンルを超えた交流の場「アクアカフェ」として運営し、展覧会後は解体してすべての材料を再利用可能な状態で回収・保管した。 3) 屋根素材としての茅の入手と茅葺き屋根の実作 茅葺き職人との交流により、1)で集めた藁に加え、地域に自生する茅を人力で入手し、円形の土構造体の上に茅葺き屋根を実作し公開した。その過程で、茅葺き技術に加え、利用可能な植物素材について新知見を得るとともに、自然素材と伝統技術の再評価の必要性と新たな活用の可能性を強く認識した。制作を通じた研究は引き続き行なう。
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