1)土による環境造形の実験モデルとしての「つちのいえ」の制作研究:本研究の中核である実験モデル「つちのいえ」の制作を継続し、未完であった茅葺き屋根を茅葺職人の指導によりつつ完成させた。屋根の一部は廃画布を再利用し、採光を兼ねた。また窓の一つを自然木と竹木舞、民家の壁土を再生した土によって完成させた。購入行為を介さない自然素材の調達と循環的再利用、ベテランの伝統職人との交流は、芸術教育の新たな課題を探るものでもあった。また美術展と左官ワークショップを開催し、異領域をつなぐクリエイティブ・プラットフォームとしての可能性を検証した。つちのいえをテーマにした現代音楽作品(中村典子作曲)も生まれた。 2)ブルキナファソ国際工芸見本市SIAOへの参加出品:2012年10月26日~11月3日、西アフリカ・ブルキナファソ日本大使館の依頼により、ワガドゥグで開かれた"Salon International de l'Artisanats de Ougadugou"において、「つちのいえ」と「アクアカフェ」のドキュメント、および京都市立芸術大学工芸科の芸術教育の紹介展示を行った。それによって、西アフリカ諸国の工芸家や芸術関係者らとの人的ネットワークを築き、今後の研究活動の足場を固めることができた。 3)中国・内モンゴルにおける建築文化研修:マリのドゴン族集落調査が政情不安のため不可能になったことの台替え措置として、2012年9月初旬、中国・内モンゴルにて、自然素材による住居建築の形式と工法の調査を行い、合わせて現地のデザイナーであり内モンゴル農業大学芸術設計学院教授ビリ・ガバト氏と少数民族文化保護におけるデザインの役割について意見交換を行った。 4)土による絵具づくりと絵画制作:土を顔料化し、オリジナルな絵具づくりとそれによるドローイング作品を制作、土素材の造形的可能性の探求を続けた。
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