研究概要 |
本研究では,幼稚園児を対象として,子ども達が玩具で遊んでいる時の行動や発話などを記録し,それらの諸特性データから,子ども達の心の動きや満足度,玩具の問題点などについて検討した.また,その結果から,子ども達にとって,楽しい玩具とはどのようなものか,また,あるべき玩具のデザインはどのようなものかについて検討し,玩具のプロトタイプの作製とその有効性を検証した.まず,平成22年度に実施した,幼稚園児の積み木遊びにおける行動観察結果から,「積み木箱に片づける時に,指をはさむ」「積み木箱にセットすると重くて運べない」「積み木が重くて,手からすべり落ちる」など,後片づけや持ち運びに関する多くの問題点が抽出された.実験には,3種類の基尺の積み木を使用したが,これらの問題点については一般の積み木においても良く見受けられるものであり,これらの問題点を解決することが重要であることを確認した.また、幼稚園児の積み木遊びにおける発話プロトコルから子ども達は,まず自分の作品を説明したり,先生や友達に呼びかけて見せたりすることに関する発話の頻度が非常に高くなっている. つぎに,これらの行動観察および発話解析結果より,デザイン要件を抽出し,それらを設計・デザインに反映させたEVAと自然木の素材を混合したプロトタイプを作製した.本プロトタイプのコンセプトは,子ども達の作品を簡単に友達や先生に見せることができるような構造および重さに配慮し,同時に,片づけも楽しく行えるような積み木(ブロック)とした.その結果,子ども達の遊び方としては,特に素材を意識することなく積んだり,穴に棒を通してつなげたりして,特に遊び方に関する指示がなくても,ほぼ我々が目的とした遊び方をした.さらに片付けの指示があると,パズル感覚で形を合わせながら楽しく片づけることが出来た.ただし,プロトタイプにおける木製ブロックを抜く場合に,少し固かったことから,足で力を入れて抜こうとする行動も見られ,はめ合いに関しては,改良が必要であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度は,幼稚園児を対象とした玩具の開発に必要な子どもの諸特性データの取得および分析を行うことによりデザイン要件を抽出し,新しい玩具の企画・デザイン開発に活用している。また平成23年度では,前年度に取得した積み木遊びに関するデータの解析およびデザイン要件の抽出を行った.加えて,その結果に基づく玩具のプロトタイプを設計および製作し,そのプロトタイプの有効性について,実証実験による問題点の抽出を行った.
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今後の研究の推進方策 |
本研究におけるプロトタイプのデザイン自体は,非常に完成されたものであり,また,実験に協力いただいた幼稚園の教諭による評価も非常に高かった.しかし,EVAの部分や紙製パッケージのはめ合いについては,持ち運びの際に容易に抜けることなく,また一方で,子ども達が指で押すと比較的簡単に取り外しできるように調整する必要がある.また,年齢によっては,どのような作品が出来るのか想像し難いこともあることから,パッケージにおける作例の提示だけでなく,作例集などの付属も検討する必要があることが分かった.今後,製品としての完成度を上げることにより,さらに,その有効性を検証しながら商晶化を進めていく必要がある.
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