平成22年度の調査研究では、まず調査対象となる道具や材料を日常的に使用する木工や金工、漆工、石工、表具などの職人に対してのヒアリング調査を行った。使い手の側から感じている道具や材料の供給状況に加え、品質の推移などにも焦点を当てて話を聞いた。 ヒアリング調査の結果を踏まえ、平成22年度の取材調査先に「友禅刷毛(京都府京都市)」、「伊勢型紙(三重県鈴鹿市)」(4件)、「研ぎ炭(福井県おおい郡)」、「竹筬(京都府京都市・岐阜県瑞穂市)」、「機大工(京都府京都市)」、「庵治石(香川県高松市)」、「天草陶石(熊本県天草市)」、「養蚕(宮崎県綾町)」を選定。事前情報の収集を終えた先から、インタビューによる聞き取り、写真および映像撮影によるビジュアル記録を中心とした現地調査に着手した。 現地では、各産品の生産工程はもとより産地の状況や、その担い手達の心情にまで踏み込んだ調査を行い、後継者不足や原材料の入手難、需要低下による廃業の危機など、伝統工芸を下支えする道具と材料の担い手達が置かれている状況をつぶさに調査した。また、その打開策や既存技術を異分野へと転用する可能性などについても討議を行い、産業としての規模を維持しつつ、伝統工芸分野への持続的な供給方法を模索した。 なかでも伊勢型紙は、4種に分類される技法のいずれの専門職も高齢化しており、いずれ後継者不在となるおそれもあるため、次世代での供給を安定させるためには早急に方法論を確立し、実践する必要性を感じた。 平成22年度は、取材候補先に挙げた先のうち「機大工」と「養蚕」を除く9件の現地調査を完了した。残り2件については次年度の取材候補先とあわせて取材調査を行う。また、現地取材が終了した取材先に関しても、現地関係機関との連絡・討議を継続して行い、各産地が今後進むべき方向を模索し、本研究結果から継続的な提案を行う。
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