研究課題/領域番号 |
22615049
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研究機関 | 秋田公立美術工芸短期大学 |
研究代表者 |
天貝 義教 秋田公立美術工芸短期大学, 産業デザイン学科, 教授 (30279533)
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キーワード | デザイン史 / 応用美術 / 工業意匠 / インダストリアル・デザイン / 工芸 / 意匠法 / 平山英三 / 松岡寿 |
研究概要 |
本年度は、7,月上旬の意匠学会におけるシンポジウムのパネラーとして、近代デザインにおけるモラルについて発表をおこない、応用美術の思想から発展した近代デザインの概念が、社会性によって特徴づけらていることを論じた。7月末から8,月初めにかけて行ったウィーンにおける応用美術博物館付属図書館を中心とした現地調査によって、従来不明であった「カンニツツ氏紋様論」(平山英三訳)の原著が、Felix Kanitzによる装飾の理論と歴史の概説書"Katechismus der Ornamentik"(1870年初版発行)であることを明らかにすることができた。さらに、1910年代にウィーンを再訪問した平山英三がアール・ヌーヴォやセセッションなどヨーロッパの新芸術に直接触れたことを明らかにした。以上のような成果にもとついて10月には、研究全体の中間報告として、第62回美学会全国大会において、研究発表を行った。発表では、明治42年(1902)意匠法にみられる「工業的意匠」概念とともに明治30年(1897)に工業教員養成所に設置された工業図案科の名称に使われた「工業図案」概念が、「工業製品の意識的な美化」を目指したインダストリアル・デザインの意味をもっていたことを、明治40年前後の平山英三の意匠思想と大正初期の松岡寿の工業図案思想から明らかにし、明治末期から大正初期の工業意匠概念が明治初期の応用美術の思想から、すべての工業製品の美化を目指す汎美的な意匠図案思想へと変化したことを指摘することができた。こうした変化を指摘することによって、従来の日本のデザイン史において触れられることのなかった明治後期の日本における工業意匠概念と応用美術思想との関係が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実施計画にかかげたウィーンにおける現地調査、意匠学会における研究発表、美学会での研究発表、現地調査にもとつく紀要論文の作成を予定通り達成することができた。しかしながら、年度末に予定していた千葉大学附属図書館における東京高等工芸学校関連資料の調査については、以上の研究成果に照らして、今回の明治後期の工業的意匠概念と応用美術思想に関する研究として取り扱うよりも、昭和初期の意匠図案概念に関する新たな研究課題として取り上げるべきと判断して割愛することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究の最終年度にあたるため、平成23年度までの研究成果を総合して、国内外で広く発表することとを第一の目的とする。具体的には、国内においては本学紀要論文の作成または、雑誌『美学』への査読論文としての投稿をおこない、広く国外の研究者にむけての発表を目的としそ、ブラジル連邦共和国サンパウロ市サンパウロ大学で開催される第8回デザイン史デザイン学国際会議(ICDHS2012)での英文による研究発表(審査付き)をおこなう。
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