研究課題
本年度までに、血管内皮細胞に対する繰り返し伸展刺激に応答して細胞の配向を制御するRho-GEFの探索を行い、6種類のRho-GEFの同定に成功した。さらに、同定されたRho-GEFの一つが、細胞間接着に依存した細胞の配向に関与することを明らかにした。また、三次元培養下の乳腺上皮細胞の細胞外基質の堅さ依存的な形質転換に必要なRho-GEFの探索を行い、上記とは異なる5種類のRho-GEFの同定に成功した。血管内皮細胞ど乳腺上皮細胞の解析から得られた11種類のRho-GEFの中には細胞内平面極性に関わる因子が含まれており、メカノセンシングを介した器官形成や形態形成に関与する分子機構の存在が示唆された。さらに、これらの分子に相互作用する分子の同定のための細胞株の樹立、プロテオミクスによる解析方法の検討を進めている。これらの解析と平行して、細胞運動、形態変化に必要なアクチン切断・脱重合因子コフィリンのリン酸化制御の解析を行い、コフィリンのリン酸化酵素LIMキナーゼがラメリポディアの伸展を促進し、LIMキナーゼの活性制御によってラメリポディアの伸展速度が制御されていることを明らかにした。また、アクチン線維とコフィリンの結合は、アクチン線維への力の負荷を感知するメカノセンサーとして働くことが示唆されているため、私たちは、コフィリンとアクチンの結合を検出するプローブの開発を行った。その結果、分割したGFPが再構成して蛍光発色することを原理としたコブイリンとアクチンの結合を検出するプローブの開発に成功し、コフィリンのより詳細な作用の解析ツールを得ることができた。本研究の遂行により、メカノセンシングに関与する新たな細胞内シグナル分子の発見に成功し、またコフィリンの活性制御による細胞内アクチン骨格の新たな再構築制御機構の発見に至った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、血管内皮細胞と乳腺上皮細胞に対する機械的刺激応答に関与するシグナル分子として、Rho-GEFの同定を完了し、11種類の分子を同定することに成功した。これらの解析に続いて、シグナル経路の探索を行う準備も進んでいる。これらの進行状況から計画はおおむね順調に進展している。
これまでに得られているメカノセンシングに関与する分子(Rho-GEF)について、個々の機能解析を進めると共に、相互作用する分子の探索を行う予定である。得られている分子の性質が多様であるため、どの分子に注目するかが課題であるが、生細胞のタイムラプス解析などで新たな手法を取り入れることで、細胞の機械的刺激の入力装置と個々の分子の関係を明らかにできると考えている。これらの情報にもとづいて、細胞のメカノセンシングに関与するシグナル伝達経路の同定、分子基盤の解明を進めていく。
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/