研究概要 |
アクチンフィラメントには,アクチン脱重合因子コフィリンの結合そのものが,フィラメントに作用する張力によって調節されるメカノセンサーとしての機能が存在する.メカノセンサーの作動機構は,力学的場における熱ゆらぎスケールの分子構造ダイナミクスに関連すると考えられる.本研究は,このメカノセンサーの実体について,アクチンフィラメントの分子構造ダイナミクスの観点から迫るものである.本年度は,これまでに我々が構築してきたアクチンフィラメントの全原子動力学モデルを用い,熱平衡状態におけるアクチンフィラメントの分子構造ゆらぎを評価した.その結果,アクチンフィラメントは,ナノ秒の時間スケールにおいて,様々な準安定構造を経巡ることがわかった.特に,フィラメントの捻り方向のゆらぎは,詳細な時間・空間スケールに迫るほど,離散的な角度変化となることが観察された.さらに伸長方向と捻り方向のゆらぎがカップリングしている可能性があることが示唆された.巨視的な時間スケールにおけるタンパク質問結合を分子構造ダイナミクスから考察するため,統計物理学を用いた理論モデルを構築した.理論モデルによる予測の結果,捻り方向の構造変化は,結合親和性を表す化学ポテンシャルを変化させることが示唆された.これらの成果は,J.Biomech.などの査読論文誌として4報,招待講演1件により発表された
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