研究概要 |
(1)神経細胞における機械刺激受容チャネルの機能欠失によるアクチン骨格再構成 まず、神経細胞を対象とする前に、機械受容チャネルのTRPイソフォームを発現しているがん細胞株におけるアクチン骨格再構成を検討した。このチャネルは、対象としたがん細胞株の細胞膜及びドット状に細胞質に存在した。このチャネルの登現をRNAi法により低下させると成長因子刺激による細胞内カルシウム流入が著しく減少した。この成長因子刺激は、細胞のアクチン骨格の再構成を促進し、糸状仮足や葉状仮足を形成させることが知られている。チャネルの登現を抑制すると、仮足形成が低下した。さらに、成長因子でがん細胞を刺激するとダイナミン2は、通常仮足形成先端部へ局在するが、このチャネルの発現が抑制された細胞では、細胞全体に分布していた。これらの結果から、このチャネル以降のシグナリングにダイナミン2が関与することが示唆された。23年度以降は、このシグナリングを詳細に解析すると同時に、神経細胞での解析を始める。 (2)ダイナミン複合体のリン酸化によるアクチン線維束形成への影響 機械受容チャネルを介した細胞内カルシウム流入は、タンパクキナーゼを活性化する可能性が高い。ダイナミンは、キナーゼ(CDK5及びPKC)によりその機能が調節されており(Tomizawa et al.,JCB,2002)、コルタクチンもまたCDK5及びPKCによりリン酸化される(Yamada et al.,未発表)。 本年度は、コルタクチンがPKC及びCDK5によりリン酸化されることを、in vivo、in vitroで見いだした。さらに、これらリン酸化酵素によりコルタクチンがリン酸化をうける部位を同定した。23年度は、これらリン酸化が、アクチンダイナミクスにどのような影響を与えるのかをin vitroを中心に解析する。
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