研究概要 |
食餌性肥満マウスに2週間にわたって無麻酔・拘束下で、片側下腹部に30分間振動刺激(<100 Hz)を連日与え、血中の各種代謝内分泌マーカー、振動部直下の精巣周囲脂肪組織における脂肪細胞、ならびに同組織内に浸潤するマクロファージそれぞれの機能遺伝子およびマーカー遺伝子の発現変動の有無について検討した。2週間を経過した刺激群および対照群では、血中中性脂肪や絶食後血糖値には有為な差はみられなかったが、血中遊離脂肪酸濃度が低下傾向にあり(p=0.05)、腹腔内投与による耐糖能試験では、糖負荷後15-60分までの血糖値が低値を示した。また、脂肪組織では中性脂肪量やレプチンやレジスチンなどアディポサイトカインの発現低下(p<0.05)に加えて、mRNAレベルでadipogenic因子の減少(PPAR_γ2, C/EBP_α, SREBP-Ic, P<0.05)とanti-adipogenic因子の増加(Pref-1, p=0.026)が見られた。また、振動刺激開始後3日の時点で、脂肪細胞分化を抑制するERK/MAPキナーゼが一過的に活性化する傾向が認められた。脂肪組織でのM1-マクロファージ(Mφ)マーカーの一部(IL-1β, IL-6, COX-2, p<0.05)が上昇した一方、多数のM2-Mφマーカーが有為に低下(IL-1ra, CD80, Arg-1, Mgl-2, LIGHT, IL-10, p<0.05)あるいは低下傾向(Ym-1, P=0.066 ; SPHK-1, P=0.083)を示した。以上のことから、力学刺激は脂肪細胞分化を抑制するのみならず、脂肪組織でのMφ極性にまで影響を及ぼし、肥満に関連した疾患における脂肪組織の代謝内分泌機能を制御しうることが示唆された。また、ラット肺高血圧モデルを用いて、sPLA_2選択的阻害薬により、肺組織でのアポトーシスが顕著に抑制され、生存期間に有為な延長を認めた。
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