研究概要 |
有限グラフ上のランダムウォークとは,グラフ上の適当な頂点に置かれた粒子を隣接する頂点に対してランダムに移動させていくモデルである.通常の「隣接頂点に等確率で移動する」-というランダムウォークでは,全頂点に粒子が訪問するまでの期待ステップ数は一般にO(n^3)であるが,グラフのトポロジーを考慮した遷移確率を採用することにより,期待ステップ数を悪くともO(n^2),トポロジーによってはO(n)まで高速化できる.さて,自然界もしくは人工システム上の多くの現象が有限グラフ上のランダムウォークとしてモデル化できる.自然現象系に目を向けると,DNAコンピューティング/ナノテクにおける分子遷移機械は熱力学的な制約の下,とりうる状態空間をランダムウォークしながら形態を変化させる.人工現象系に目を向けると,情報システムであるインターネットのサーチエンジンのデータ取得用ロボットはWeb空間上をランダムウォークしながらデータを取得する/このように多くの分野で,高速なランダムウォーク設計が大きな意義を持つ.本研究は,ランダムウォークの高速化の仕組みを解明し,その設計論を確立することにより,諸分野におけるランダムウォークとしてモデル化できる現象/対象に対する解決法の提供を試みるものである. 平成23年度は、22年度に得た結果(任意ゐグラフでO(n^2)-到達時間となるようなランダムウォークを実現するために必要十分(最適)な局所トポロジー情報)をふまえ,局所/大域構造の中田立となるようなグラフ量(Path-Distanice Width)に注目する解析を行った。また本研究の「応用」の候補の一つである情報ネットワークへの理論適用を考慮し,オーバーレイネットワークの構造解析に関する研究を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成」により,1粒子による高速(O(n^2)-到達時間)ランダムウォーク設計に必要十分な局所トポロジー情報が明らかになった。これにより,本研究はさらなる高速化に取り組むことができる.これに関しでは大まかに2点考えており,23年度から取り組みつつある.具体的なテーマは以下め2点である:1.多粒子系のランダムウォークの特性の調査,2.局所トポロジー情報に限定しない形でのトポロジー情報による高速化.
|