研究概要 |
本研究では,複数人で旅行中に名所やレストランを探したり,宴会後に二次会の会場を探したり,災害時に安全経路を探すといったように,モバイル環境において人と人が協調して情報収集・検索を行うシチュエーションに注目する.ここでモバイル環境では,携帯端末のディスプレイサイズが小さく,また人と人との距離などの関係が流動的であるため,情報共有が難しいという問題がある.そこで本研究では,モバイル環境において数人で連携してある特定の情報検索を行う協調サーチについて,人と人の関係を考慮した協調検索および探索の基礎を確立することを目的としている. モバイル協調検索では,ある特定の目的において意思決定をするために検索していることが多い.本年度は,この意志決定という点に注目した.意思決定を目的としたモバイル協調検索においては,(1)協調検索の序盤においてユーザ間で探索範囲が被ってしまい,網羅的に検索することができない.(2)協調検索の終盤においてユーザ間で検索内容が対立してしまい,最終的に意思決定に至れないという2つの問題がある.そこで,この問題を解決するため,モバイル協調検索に参加しているユーザの探索空間および入力クエリを分析することにより,ユーザ間での探索範囲の収束度・発散度を推定する手法を提案した.また,その推定した収束度および発散度に基づき,グループ全体としての収束および発散をコントロールするようなクエリ推薦を行う手法を提案するとともに,スマートフォン上でシステムを実装した.さらに,実システムを用いた評価実験を実施することにより,手法の有効性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施したモバイル協調検索に関する研究では,協調検索への参加メンバーが検索において意思決定を目的としているということに注目し,その検索を支援するクエリ推薦手法を提案するとともに,評価実験を実施することでその有効性を明らかにした.当初のアプローチとはやや異なっているが,モバイル協調検索を支援するという目的において,よりよいアプローチを明らかにできているということ.また,新たなるクエリ推薦手法のニーズも発掘できているため.
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究実施の結果,モバイル協調検索においては,参加者の探索範囲を考慮したクエリ推薦が有効であるということがわかった.そこで,今後はこのモバイル型の協調検索におけるクエリ推薦手法について深い分析を行うとともに,あらたなる手法の提案を行う.また,提案した手法をiPhoneやiPod touchなどのモバイル端末上で動作可能なシステムとして実装し,その有効性をユーザベースの実験を行うことにより明らかにする.ここでは,満足度に関するアンケートや,ユーザの振る舞いの分析などを行うことにより,システムの利点,欠点などを明らかにする.また,評価実験においては,探索時間に制約を入れたり,協調検索の人数を変更したりすることにより,違った状況を作り出すことによって,有効性について深い検証を行う.
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