研究概要 |
本研究の目的は,カメラとコンピュータを用いた,聴覚障害者(発話障害者)側からの手話認識システムの開発である.本システムは発話障害者が所持し,その人が行う手話の映像を胸部に固定したカメラで撮影し,その映像をコンピュータ(ウェアラブル(携帯型)PC)で解析して手話を認識し,言語化して相手に発信するシステムである.そのため従来システムとは異なり,本システムを装着すれば,発詣障害者は誰にでも意思を伝達することが可能になる.これにより,発話障害者のQOL (Quality of Life)が格段に向上することが期待できる. 本年度の成果は以下のとおりである. (A)指文字認識性能の向上および動きを伴う手部動作の認識法の開発 指文字を対象として,静止指文字には手形状のシルエット表現,また動きのある指文字には動作履歴画像(Motion History Image : MHI)表現を適用し,それぞれ特徴ベクトル化して固有空間を用いて認識を行う方法を考案し,5名のユーザごとの個別の指文字認識実験(一人のべ225文字)を行って,平均89%の認識率を得た.ユーザごとの個別の認識実験を行った理由は,提案する「手話行為者側からの手話認識システム」は,ユーザごとに個別化されたシステムとなるのが目標であるためである.個別化すれば,各ユーザの手形状や手動作の癖を考慮した認識システムの構築が可能となるため,高い認識率を期待することができる. (B)指文字動作のセグメンテーション法の開発 連続する指文字動作を各指文字に分割するために,フレーム間の差分画像の面積等を評価して分割する方法を考案し,実験的にその性能を評価して91%の分離率を得た.
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