研究課題
本研究では、「複数の液晶パネルを積層し、パネルに厚みを与えておけば、視線方向に依存して表示素子の重なり合い具合が変化する」という現象に着目し、これに基づいた新たな裸眼立体視の方式を考案する。具体的には、積層型液晶パネルを用いる方式の基本的な性質を解明し、理論的な基盤を与えると共に、プロトタイプシステムを構築して実用化に向けての可能性を検証することを目的としている。平成22年度は、本方式の基本アルゴリズムを確立し、その理論的な解析を行なった。基本アルゴリズムの中には、光線空間のサンプリングや重みづけ、さらには積層されたパネルへの光線の"投影"などの具体的な手順が含まれている。光線空間の情報量が、パネルに含まれるピクセルの総数を上回っているため、"投影"の過程では、適当な目的関数を定めて最適化を行う必要がある。ここでは、目的関数として、投影される光線の輝度と、パネルから再生される光線の輝度との間の差を二乗和し、重み付けを行ったものを用いることにした。また、重みづけには、表示面の法線方向と光線との間の角度に依存する関数を用いた。上記の基本アルゴリズムに基づいて、積層型液晶パネルの理論的な解析も行った。具体的にはパネルの配置や積層枚数と、表示画像の解像度や視域との間の関係を、数値シミュレーションを繰り返しながら調べた。この結果、解像度を高く保ちながら広い視域を確保していくためには、パネルの配置が最も重要なファクターになることが分かった。また、表示面の前面に凸レンズを配置することによって、画質の向上を図れることも判明した。一方、現存する液晶パネルの開口率を考慮すると、積層可能なパネルの枚数に上限があることも分かった。これらの知見を踏まえ、平成23年度は、提案方式に基づいたプロトタイプシステムの構築に着手していきたい。
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Stereoscopic Displays and Applications XXII
Proceedings of Computer Grahics, Visualization, Computer Vision and Image Processing
ページ: 157-164