研究概要 |
本研究の目的は,視点の選択と統合を確率を用いてモデル化し,絵画の生成および認識過程を確率的に記述する.そこから導出された理論を用いて,非透視投影をよく用いたPaul Cezanneの画風を模擬するCGのアルゴリズムを提案することである. 昨年度H22年度は,視点を計算すべき視覚オブジェクトは作画する人が決定していた.H23年度は,この視覚オブジェクトを視覚シーンから自動抽出するアルゴリズムの設計原理をもとめるために以下の二つの研究を行った. 1.視覚オブジェクトのセグメンテーションを行うマルコフランダムフィールド(MRF)モデル 視覚シーンからオブジェクトを自動選択するには,画像工学のしばしば研究されているセグメンテーションを行う必要がある.そこで本研究課題が基本にしているMRFモデルの枠組みの中で,優れたセグメンテーション能力を持つ領域ベースMRFモデルを用いることにした.本研究は3次元のMRFモデルを用いるので,通常は2次元である領域ベースMRFモデルよりも計算量が著しく多くなる.その計算量低減のために変分ベイズ法にもとづくアルゴリズムを開発した.本手法は高く評価されて,日本物理学会が出版するJournal of Physical Society of JapanのPapers of Editor's choiceに選ばれた. 2.視覚的顕在性の神経機構の解明 ヒトは視覚シーンからオブジェクトを選択する際に眼球運動を積極的に援用していると考えられている.そこでヒトの眼球運動の神経機構を探ることで,より人間らしいアルゴリズムが提案できると考えた.ヒトの脳には,視覚的に目立つオブジェクトの視野中の地図である顕在性マップが存在する.その顕在性マップ形成にとって重要な神経回路モデルである局在興奮ネットワークを研究した.
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