能の謡の音声に含まれる芸術表現の可視化に関し、平成22年度に明らかにした高速でしかも時間分解能の高い方法を見いだし、これまでに開発した駆動音源構造分析法(XSX)を補完する方法として追求した。その仮定で開発した方法と、それによる可視化ならびに操作による表現の知覚の変化に関して、信号処理分野で最も権威のある国際会議(ICASSP2012)に投稿し採択された。この方法の追求の過程において、更に本質的に優れた方法を見いだし、国際会議に投稿するとともに、平成24年度に開催される会議の招待講演として採択された。さらに、これらの成果の国内への広報を狙い、平成24年2月の音楽情報科学研究会において、セッションを代表する講演としてネットによる中継も併用した発表を行った。ICASSP2012は、年度末の平成24年3月に開催され、本研究の成果発表は、発表が行なわれた特別セッションにおける重要な発表として、参加者に大きなインパクトを与えることに成功した。本法の適用範囲も、研究協力者である金春康之氏の歌いに加え、大阪芸術大学の中山教授(当時)が科学研究費による研究の成果として出版したCD「日本語を歌、唄、謡う」に収録された多用な伝統芸術における歌唱や、RWCにより制作されたデータベースの歌唱音声を併せて分析することにより、調整し拡大されている。このように、本研究計画の重要な目標であった、芸術表現を分析し再構築することのできる手法の確立と、それを用いた実験手法を具体化できたことは、本研究の本年度の大きな成果である。
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