これまで仮想世界に構築されてきた人工生命を、現実の世界に構築するための新しい技術の開発を行い、実際の生命を概念的に超える、大きな人工生命現象を構成することを目的とする。このために、非線形科学から始まった複雑系の科学の思想と技術を基盤とし、新しい人工生命研究のための実験システム系のプロトタイプをデザインする。 具体的には、空間的に広がった視覚的および聴覚的な情報の流れの場を自己組織化することで、物質的な個体の境界ではなく、時間としての個体の境界を構成する。特に挑戦的な点は、このシステムを用いてサイエンスとアートのぎりぎりの境界をねらい、説明的ではなく体験できる生命の新しいシステムの構築を目指すというものであった。 具体的には立体音響システムを、Max/MSPのライブラリーであるspatzを用いて開発し、1)Craig Reynoldsによって開発されたboidssystemを用いて、自律的に運動しながら生成するサウンドスケープの研究を行った。2)自律的なセンサーネットワークを構築し、それを1週間以上、公共の空間および大学内の空間においてデータをとり生成した。この結果、1)2)により自律的に変動する人工のサウンドスケープを体験することに成功した。これはアカデミックには、自律的なシステムの現実的な応用をはじめてシステマティックに示したという意義を持ち、またサウンドスケープという観点から空間や時間を考察するための道具を提供することができた。
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