平成23年度は、前年度に引き続き近世期日英欧近世・近代家族に関する本研究の重要な基礎となる立体家系図群生成を実施した。既にデータベース生成(MacFamily 6)を果たしている日本の上塩尻村およびイギリスのウィリンガム教区の事例を準拠枠として、日英双方でのデータの追加をしている。予想通り、そのデータ量が膨大なものとなり、いよいよその立体表現の必要性が増した。夏期には、日本で時間地理学の専門家(お茶の水大大学大学院人間文化創成科学研究科・宮澤仁准教授)のレビューを受けた。12月には連携研究者平井進教授の教示でドイツ北部を中心とする史料分析を実施し、また系譜表現方法を検討した。業績に掲げた研究ノート(『国際比較研究』8号、2012年)は、その成果の一部でもある。くわえて方法論の確立のために、基本資料としてM・スパフォド著『コントラスティング・コミュニティーズ』の一部翻訳を前年度に引き続けて行い、社会経済史と系譜学の架橋に寄与するものとした(前掲『国際比較研究』第8号に収録)。そして、これらの活動を通して得られた着想により、立体表現のプロトタイプを2012年5月現在生成中である。このプロトタイプ表現が完成した暁には、既存のMacFamily 6に入力済みの大量データを比較的短時間に処理し、本研究計画の主要テーマである、アカデミックな用途に耐えうる立体家系譜が使用可能となる見通しである。
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