研究課題
中央アジアの石刻絵画、特にアイベックス(野生のヤギ)のスタイルの定量化データを、平成21年度までに開発した画像解析法によって求め、スタイルの差と遺跡間の距離や遺跡の時代差との相関を求めた。その結果、スタイルの差と遺跡間距離とは300km以下では相関があり、それ以上では相関が認められなかった。一方、スタイルの差と時代差とは、新石器時代から紀元後にわたって、相関が認められなかった。このことは、300km以下の比較的近い地域間で文化的な交流があったこと、および人々は時代の経過を越えて同じスタイルを維持しようとしたことを示唆する。時代の経過によらずスタイルが変わっていないことは、考古学者が一般にもっている印象であり、この結果はその印象を客観的に裏付けたことになる。石刻絵画のスタイルが変わらなかったことから、それが同時代や後世にメッセージを残す目的で描かれたと考えられる。そのメッセージを解読する試みを、ウズベキスタンのザルミス渓谷の遺跡にある、狩りの様子を表している1つの絵画群についておこなった。その際、当時の人々が種々の動物に対してもっていた信念、および日本の弥生式土器の線刻絵画のスタイルについての知見を基にした。個々の絵画群の解釈に加えて、描かれた動物の左向き右向きの違い、および午前午後の岩壁に当たる日差しの違いをもとにして、ザルミス渓谷の遺跡全体がもつと推定される構造について1つの提案をおこなった。それは、渓谷全体が奥の聖地を訪ねる巡礼路になっているというものである。個々の絵画群のメッセージ解読、および遺跡全体の構造の推定を、今後も続ける予定である。
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芸術工学会誌
巻: Vol.54 ページ: 12-13
Symmetry : Art and Science (Proc.Conf of ISIS Symmetry. Austria, 2010)
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http://www.kobe-du.ac.jp/gsdr/takaki/