協調・競争の起源やメカニズムを調べるうえで、動物における協調-競争の相互過程を調べることがカギになると考えられる。ここでは、「協調と競争」の両方の側面を見ることができるゲームとして「囚人のディレンマゲーム」をサルに行わせる試みを行った。今年度はこのゲームをサルにさせるために必要なコンピュータープログラミングと、装置の作成を行い、予備実験に着手した。 2頭のニホンザルに「繰り返しのある囚人のディレンマゲーム」をするように訓練する上で最も重要なのは、ニホンザルがこのゲームのルールを理解し、それに従った行動をとるのか(パラメーターを変えれば、それに応じて行動を自分に有利になるように変化させるか)、を十分に確認できるまで訓練することである。そのために8段階ほどのステップを踏みながら、一つ一つサルの行動がルール理解に基づくことを確認しながら進んでいる。 実験では、それぞれのサルが見ることができる2台のコンピューターディスプレイを間において、モンキーチェアー上の2頭のサルを相対して座らせる。それぞれのサルの手前(ディスプレイ下)にあるジョイスティックを操作することによりサルは画面上の右か左の選択肢を選ぶようにした(2頭のサルは同じ画面が見せられる)。2つの選択肢は協調と競争の2つである。報酬は液体報酬(ジュース)を用い、自分のもらえるジュースの量も、相手がもらえるジュースの量も目前に提示することとした。プログラミングはReflective computingのTEMPOシステムを用いて作成した。現在、各サルの選択行動だけでなく、反応潜時、水なめ予期反応、眼球運動などの測定のための装置の作成も開始している。
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