協調・競争の起源やメカニズムを調べるうえで、動物における協調-競争の相互過程を調べることがカギになると考えられる。ここでは、「協調と競争」の両方の側面を見ることができるゲームとして「囚人のディレンマゲーム」をサルに行わせる試みを行った。今年度は2頭のサルがこのゲームで対戦する段階まで実験を進めることができた。 (1)サルにこのゲームが理解できるように、8段階ほどの段階を踏みながら訓練した。最初は、1頭だけのサルにおいて、「協調」と「競争」に相当する選択肢を選ぶと、一定の割合で報酬(ジュース)が与えられたり、与えられなかったりすることを経験させた。 (2)次いでコンピューターが相手となる条件で、ゲームを訓練した。 (3)2頭でのゲーム事態に入ると、それぞれのサルが見ることができるコンピューターディスプレイを間におき、モンキーチェアー上の2頭のサルを相対して座らせた。それぞれのサルは自分のもらえるジュースの量も、相手がもらえるジュースの量も目前に見ることができるようにした。 (4)サルは1頭だけでの訓練では、より多くの報酬が得られる選択肢を確実に選んだ。コンピューターが相手のときにも、そうした傾向が見られた。 (5)2頭のサルでのゲーム事態では、これまでのところサルにゲームの性質が十分理解されているとは言えない段階にしか至っていない。すなわち、右が左の選択肢のみに反応する、あるいはランダムな反応をする、というような、訓練が十分でないときにサルがよくとる行動が見られ、より多くの報酬を得るための適切は反応ができるところまでは至っていない。 (6)訓練が成功しなかった原因として、サルが自分と相手の報酬量がどのくらいかに十分注意を払わないという傾向が見られたことが関係していると考えられることから、今後はサルに相手の、そして自分の報酬に十分に注意がいくような設定にして新たな実験を行いたいと考えている。
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