研究概要 |
本研究では,人-機械インターフェイスの操作から得られる現実感(「操作感」)の知覚が,自己運動とそれによる環境変化の知覚情報(感覚フィードバック)の脳内処理の中でどのように表現されているのか解明する具体的には,仮想(Vitual reality:VR)空間内での操作行動にともなう視覚フィードバックをパラメトリックに制御した条件下で行動指標の計測とともに非侵襲脳機能計測を行い,主観的な操作感の変化が運動-感覚連関にどのように反映されるのか,高精度な脳活動ダイナミクス解析技術と脳領域間の相互作用を解析する技術を用いて統合的に理解することを目標とした. fMRI装置内で,視覚フィードバックの忠実性をコントロールした1次元の目標追跡実験(被験者のジョイスティック操作に関連して動くカーソルで,画面上を移動するターゲットをできるだけ正確に追跡する実験)を行い,被験者のジョイスティック操作,画面上に表示される目標(ターゲット)とカーソルの位置関係,およびfMRI信号を同時に計測した.実験では,(a)被験者のジョイスティック操作に対応して忠実にカーソルが移動する条件(A条件)と,(b)被験者のジョイスティック操作に関わらず,他の被験者によって行われた目標追跡結果に従ってカーソルが移動する条件(B条件),の2つの視覚フィードバック条件を設定した.また,各試行で被験者の主観的な操作感(どの程度自らのジョイスティック操作がカーソルの動作に反映されていたか)の報告を求めた.この実験から得られるfMRI信号のStatistical Parametric Mapping解析を行ったところ,A条件とB条件の間には有意な脳活動の差は認められなかった.一方で,被験者の主観的操作感の知覚に比例して,right tempolo-parietal junction(rTPJ)における脳活動が増大することを明らかにした.また,同様の目標追跡課題を遂行中の被験者のMEGデータの計測を進めた.今後,MEG/fMRI両計測で得られたデータの統合解析を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度末までに,本研究計画前半の大きな目標であった,脳磁図(MEG)と機能的MRI(fMRI)データを統合処理による,高精度な脳活動ダイナミクス解析技術の開発が終了するとともに,fMRIを用いた操作感知覚実験がほぼ終了した.操作感知覚MEG実験は現在データ計測が進んでいる段階で,平成24年度前半に終了する見込みで,その後得られたデータを統合する当初の目的が達成される見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年前半に操作感知覚実験のMEGデータの取得を終了し,平成24年度後半に,MEG/fMRI両データに対して,すでに開発した脳活動ダイナミクス解析技術を適用する.研究期間終了までに,当初の目標であった主観的な操作感と運動-感覚連関の関連が明らかにできることが期待できる.
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