研究概要 |
ゲーム論的確率論は,Shafer and Vovk(2001)の本によって提唱されて以来,さまざまな技術的な拡張が得られて来ている.研究代表者(竹村)および協力者(竹内啓,公文雅之,宮部賢志)によって,本年度は次のような結果が得られた. 1)2項モデル(Cox-Ross-Rubinstein)と異なり,3項モデルあるいはさらに多項モデルにおいては,厳密な複製戦略が存在しないために,上価格と価格および下価格は,多時点のゲームにおいては,後ろ向きの帰納法によって数値的に求める必要があり,厳密な解析は困難である.この問題に対して,我々は中心極限定理と同様の操作によって,上価格の満たす偏微分方程式を考察し,この偏微分方程式がBlack-Scholes-Barenblatt方程式とよばれる方程式と一致することを示した. 2)ゲーム論的確率論における大数法則の証明は,測度論的確率における議論と同様にKroneckerの補題を用いるのが標準的である.Kroneckerの補題を用いるためにはrandom seriesの収束を示す必要がある.ゲーム論的確率論ではこれまで大数法則のさまざまな収束レートが得られてきたが,random seriesの収束のレートを明示的に導出した研究はなされてこなかった.この問題に対して我々は,2乗ヘッジさらにはより一般のヘッジの存在するゲームにおいて,random seriesの収束に関する一般的な結果を得た. 以上の結果は,それぞれはtechnical reportの形で発表され,現在国際雑誌に投稿中である.
|