研究概要 |
意図的な欠測を伴うデザインは,サンプルを何ブロックか分けた上で,共通測定項目群とブロックごとに独自の測定項目群を組み合わせた測定を行うことで,一部の変数についてはサンプルサイズを失う代わりに,相関関係を検討できる変数の組み合せを増やす技法である。 本研究は,統計的社会調査において,意図的な欠測を伴う調査設計の効用評価法を研究し,調査設計のための支援アルゴリズムを開発し,実用化ための知見を蓄積することを目的としたものである。 平成22年度にはデザインの効率性を評価するための効用関数アプローチによる理論の整備と簡単な数値実験を行った。また過去の類似の調査票設計による調査の実例の調査とそれに基づく実用的な調査票フォーム数の検討などの考察を行った。 効用評価法として,効用関数を導入した評価方法を理論的に検討した。考察した効用関数は,推定可能な「パラメータ個々の効用」の総和をとるもので,「個々の効用」=「パラメータの価値」×「検定力」で定まるものとし,「パラメータの価値」には,設計者が特定の変数(調査項目)をどの程度重要と思うか,パラメータ(平均,分散,相関係数など)のうちどのパラメータを推定することを重視するか,などのような主観的な要因を導入した。他方,要素の積を取る部分には別の考え方もあり得るため,効用関数のあり方について継続検討する必要があることが判明した。上記の形の効用関数を仮定した場合の数値実験では,多数の調査票フォームを用意するデザインの効用が,より少ないフォーム数のデザインの効用を上回るためには,全体のサンプルサイズが大きいことが重要であることなどが判明し,大局的には調査票設計の支援指針として機能しうるとの見通しを得た。
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