研究概要 |
意図的な欠測を伴うデザインは,サンプルを何ブロックか分けた上で,共通測定項目群とブロックごとに独自の測定項目群を組み合わせた測定を行うことで,一部の変数についてはサンプルサイズを失う代わりに,相関をとることができる変数の組み合せを増やす技法である。 平成23年は2名による研究組織で,次の3点に関する研究を進めた。 [1]デザインの効率性を評価するための効用関数アプローチによる理論の整備 調査票設計を考察する状況を,「因子分析(多因子モデル)」的な状況に拡大し,その文脈の下で効用関数を構成する方法を考察した。萌芽的な成果を数理社会学会でポスター報告した。 [2H1]の状況の下での数値実験研究の準備 当初,テスト理論的な文脈あるいは一対比較法の文脈下での考察を予定したが,むしろ[1]の過大に統合し,数値実験で考察すべき条件設定について検討した。 [3]実験調査の実施による実データの取得 平成24年3月に実験的ウェブ調査を実施した。ウェブ調査はA社とB社の2社に対し計3条件(A1,,A2,B1条件とする)で実施し,[1]で言及した因子分析的な項目準備状況を想定しており,効用評価の観点から分冊調査票を設計する際の実例提示のために利用する。この目的の他に,項目の提示順序のランダム化の効果(A1とA2の比較),実施者間の差(A1とB1の比較)を行うことができる設計とした。人間関係観や信頼感,不安感に関する実質科学的な観点での分析も行うことができる,例えば同時期の他の全国規模社会調査とも比較可能である。単純集計レベルでも,例えば人のためになるより自分の好きなことをしたい,という項目の支持が高いなど,ウェブ調査の回答者特性を反映したと思える結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度中には,23年度の考察を生かした数値実験を含め,単問項目での効用評価アプローチと複数問がまとまった因子分析的文脈での同アプローチの整備を引き続き進める。またこの成果に基づき,平成23年度に取得した調査データも利用し,取得データで一部項目を分冊化した調査票の構成例を示す。 同調査の項目選定から,研究協力者の大学院生を加えたので,実質科学的な分野での知見を得るための分析・研究も行い,成果の拡大を図る。
|