平成24年は2名(と院生研究協力者)による研究組織で,次の2点に関する研究を進めた。 [1]デザインの効率性を評価するための効用関数アプローチによる理論の整備とシミュレーション研究:前年度までの研究を洗練させ,調査項目が因子分析的な尺度構成用の項目で用意されている状況における調査項目の分冊への配置法についての検討を進めた。特に因子分析モデルを想定したシミュレーション研究を行った。 [2]平成23年度中に実施した実験的ウェブ調査データの解析:平成23年度に実施した実験的ウェブ調査のデータを分析した。ウェブ調査は計3条件で実施し,[1]で言及した因子分析的な分冊配置を想定した実例提示用に取得したものである。項目の提示順序のランダム化の効果,実施者間の差の検討を行った他,このうちの1条件について院生研究協力者を得てウェブ調査の実際の調査データの相関分析から,人間関係観や信頼感に関する年齢層ごとの相関構造の違いについて実質科学的な観点での分析も行った。 [1]のシミュレーション研究では,因子間相関や各尺度の和得点のバイアス等を従属変数,分冊方法・欠測処理方法・モデルのパラメタなどを独立変数とした。主な成果は次の通り。分冊方式のうち,特定因子の項目を全て欠測にして下位尺度を分散させる分冊方式では,和得点のバイアスに関して全体として有利になる一方で、因子間相関の推定については不利になる,下位尺度内での欠測を全ての分冊に振り分ける方式の間では,結果に大差はないが,重要な項目を事前に特定できる条件では,推定精度が良くなる面がある,欠測値処理法間の差もわずかにある(和得点の推定が可能な方法は利用した2方法のうちの一方のみである)。 [2]の実データ解析では多母集団同時解析を行い,用心深さという心理的特性から一般的信頼感へのパスに年齢層間で差がある,等の実質科学的な成果が得られた。
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