研究概要 |
スパインを持たない大脳皮質の介在神経細胞においては、生後発達初期に長く安定な突起が樹状突起上に形成され、その突起上にシナプス後部分子の集積が起こることを見出した。このような突起形成は発達初期にのみ観察されることから、シナプス形成過程で重要な役割を果たしていると考えられる。本研究ではこのような突起形成がスパインを持たない神経細胞における共通の特徴として重要であることを、分散培養法、スライス培養法などとイメージングを組み合わせて明らかにすることを目標とした。(1)シナプス後部の構造をPSD-95-YFP(あるいはtagRFP),シナプス前部の構造をsynaptophysin-CFP,あるいはFM色素によってラベルすることで、樹状突起から伸び出す長く安定な突起の上をシナプス後部構造が移動する際には、シナプス前部の構造も同期して移動することを見出した。(2)介在神経細胞の突起を介したシナプス形成を分子生物学的に阻害する方法論を確立し、特に微小管の機能制御分子(Lis1,Ndel,dynein)に着目して、RNAi、dominant negative分子の発現、薬理学的機能阻害、ノックアウト動物由来の培養細胞の解析などを行い、介在神経細胞におけるシナプス形成、発達においてこれらの微小管の機能制御分子が重要な役割を果たしていることを明らかにした。スパインを持たない介在神経細胞において、分化の初期にはスパインより長い突起が樹状突起表面から伸び出し、このような突起上に形成されたシナプス後部構造はシャフトに向かって逆行性に移動し、最終的にはシャフトまで移動してそこで安定化するというモデルを一連の実験から提出することが出来た。
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