研究概要 |
線条体投射ニューロンは、線条体の主要な神経細胞として運動/認知/情動などの高次脳機能を支える神経ネットワークを構成し、大脳皮質、視床、中脳黒質、海馬、扁桃体など様々な脳内領域の投射ニューロンから神経入力を受けることが知られている。これら神経入力の破綻によってはParkinson病、統合失調症といった神経疾患が引き起こされることが示唆されている。従って、どのように線条体投射ニューロンの分子生物学的・形態学的性質が、細胞内因的な遺伝学的プログラムならびに細胞外因的な神経入力依存的なプログラムによって調節されるのかは非常に重要な問題であると考えられる。 この問題を扱う上で本年度においては、先ず線条体投射ニューロンに対して遺伝子発現を可能にするin vivo電気穿孔法に基づく遺伝子導入系を組み立てた。その結果、外側基底核原基に対して電気穿孔法を用いた遺伝子導入をおこなう事で線条体投射ニューロンを優位に単一細胞レベルで標識しうる解析系が構築された。胎生期11.5日目の遺伝子導入より線条体投射ニューロンサブタイプのうちstriosomeおよびmatrixを構成する線条体投射ニューロンの両者がほぼ同じ効率で標識しうる事が明らかとなった。また胎生期10.5日、胎生期13.5日における遺伝子導入により8triosome及びmatrixを構成する線条体投射ニューロンに対してそれぞれ選択的に標識しうることが可能となった。今後は、この遺伝子発現誘導系によりどのよう,な細胞内因的・外因的な調節機構が働いて線条体投射ニューロンを介した神経ネットワーク機能の調節が行われているのかを明らかにすることが期待される。
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