線条体投射ニューロンは、線条体の主要な神経細胞として運動/認知/情動などの高次脳機能を支える神経ネットワークを構成し、大脳皮質、視床、中脳黒質、海馬、扁桃体など様々な脳内領域の投射ニューロンから神経入力を受けることが知られている。これら神経入力の破綻によってはParkinson病、統合失調症といった神経疾患が引き起こされることが示唆されている。従って、線条体投射ニューロンの分子生物学的・形態学的性質が、どのような遺伝学的プログラムならびに神経入力依存的なプログラムによって調節されるのかは非常に重要な問題であると考えられる。 今年度においては、前年度において確立されたin vivo電気穿孔法に基づいて、線条体を構成する個々の神経細胞の形態を単一神経細胞レベルで解析するために、先ずCre-loxPシステムを用いた疎な神経細胞標識系を確立した。次に、この単一細胞レベルでの神経形態の解析系を用いて、従来の方法ではその解析が困難であったstrisomeを構成する線条体投射ニューロンに解析の焦点を当て、それがどのようにその特徴的な形態を獲得していくのかをNeurolucidaによるトレース法も組み合わせて解析した。その結果、striosome線条体投射ニューロンは、生後発達期早期において既に樹状突起形態形成に関して成熟した形態を獲得していることが明らかとなった。更に、この遺伝子導入系を改良してプラスミドとトランスポゾンの二種のベクターにより早生まれのstriosome線条体投射ニューロンと遅生まれのmatr函線条体投射ニューロンを同時に標識しうる系を確立した。この系を用いることで、早生まれのstriosome線条体投射ニューロンおよび遅生まれのmatrix線条体投射ニューロンを選択的に同時に標識することで、線条体の特徴的なモザイク構造の構築がどのように進むのか、それら二種類の細胞の分布、形態、細胞動態について解析しうることを確認した。
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